NPO法人の不祥事や犯罪事件

NPO法の趣旨との関係

特定非営利活動促進法は、阪神・淡路大震災を契機としたボランティアその他の市民活動に対する関心の高まりの中で、市民団体に法人格を付与する簡便な方法を用意することによって、これらの活動を促進することを目的として制定されたものです。そのため、市民の自主性を最大限に尊重すること、行政による介入は最低限にとどめることを前提として制度設計がなされています。
当初から法律の不備は指摘されていましたが、とりあえず市民活動の促進に向けた第一歩を踏み出すことが重要であり、不備があれば施行後一定期間を経過した段階での実績を見てから修正を加えればよいというのが、国会における議論の大勢でした。現に特定非営利活動促進法の施行時点での附則にも、「特定非営利活動法人制度については、この法律の施行の日から起算して三年以内に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」と明記されています。
その後の法律の見直しですが、基本的には税制上の優遇措置(認定NPO法人制度の創設)など、NPO法人の財政基盤を強化することに焦点が向けられており、法制定の趣旨からいっても、所轄庁によるNPO法人の監督強化については顧慮されなかったきらいがあります。このように法人格が取得しやすく、株式会社などの他の法人に比べて当局の監視が緩いというNPO法人制度の特徴を逆手にとって、利己的な目的のために制度を悪用できたということもまた事実であり、これが今日に至るまでのNPO法人関連の事件や不祥事の背景となっています。


NPO法人に関連した犯罪事件や不祥事の具体例

特定非営利活動促進法の施行から現在までに、NPO法人の役員が犯罪に関与したり、活動の実態がないのに法人格が残ったままになっている(休眠NPO法人)などの事実関係が明らかとなった多くのNPO法人が所轄庁から設立認証を取り消されています。その具体的な事例としては以下のようなものが挙げられます。
なお、特定非営利活動促進法の規定に基づき、所轄庁でも報告及び検査、改善命令、設立の認証の取消しといった段階的な対応をしている場合がありますので、事件発生と認証取消しの年次は必ずしも一致しません。

NPO法人関連の不祥事・犯罪事件一覧
2004年 山口県のNPO法人の理事長が、建設会社社長から100万円を脅し取ったとして、暴力団組長とともに恐喝容疑で逮捕され、このNPO法人も暴力団の統制下にあることを理由に認証を取り消された。
2005年 東京都のNPO法人が架空の事業をでっち上げて延べ約2千人から約23億円もの出資金を騙し取り、元代表理事ら役員が詐欺容疑で逮捕されたほか、法人も認証取消しとなった。なお、このNPO法人は海外旅行、焼却炉販売、霊芝栽培、ロシア絵画オークションなどの事業を次々に立ち上げており、所轄庁の東京都から改善命令を受けていた。
2006年 北海道のNPO法人(従たる事務所は千葉県)の理事長らは、興行資格で入国させたフィリピン人女性を東京都内の飲食店でホステスとして違法に働かせ、店側から多額のあっせん料を得ていたため、入管法の不法就労助長罪の容疑で警視庁に逮捕され、NPO法人も認証が取り消された。
2007年 三重県のNPO法人の理事長らが、ヘリポートの名目で国交省の空港事務所に許可申請をしていた愛知県内の用地に家屋廃材を不法投棄し、廃棄物処理法違反容疑で逮捕されたほか、NPO法人も認証が取り消された。
2010年 横浜市の2つのNPO法人が代理店を通じて契約した3500台の携帯電話のうち約2000台が会員を通じて外部に流出し、その一部が振り込め詐欺や覚醒剤密売などの犯罪行為に悪用されたため、携帯電話不正利用防止法違反容疑で関係先が家宅捜索を受けた。携帯電話本体は無料で、基本料金2年分約8200万円が代理店からキャッシュバックされる条件だったため契約したものの、法人としての使い道はほとんどなかった。なお、当該NPO法人は2014年までに解散している。
2011年 休眠状態だった埼玉県のNPO法人が転売されて詐欺グループの手に渡り、詐取金を振り込ませるための銀行口座を多数開設する目的で悪用され、総額約1億円の被害を出して刑事事件として立件された。このNPO法人は所轄庁から認証を取り消された。
2011年 大阪府のNPO法人が無免許で生活困窮者に賃貸物件を仲介したとして、名義貸しをした不動産仲介業者のフランチャイズ店経営者ともども、その理事が宅地建物取引業法違反で逮捕された。また、いわゆる貧困ビジネスに関連して、生活困窮者に虚偽の申請をさせ、生活保護費を不正に受給させたとして、生活保護法違反容疑でも再逮捕された。
2012年 東京都のNPO法人は債務整理や離婚などの悩み事相談を名目に会員募集を行い、相談者に100万円もの多額の解決金を請求していた。このNPO法人に関連して、事業に関係のない別会社の経費を計上し、不当に高年齢者等共同就業機会創出助成金430万円の交付を受けていたとして理事が詐欺容疑で逮捕されたが、詐取された金銭の一部は、同時に逮捕された暴力団組長に流れていた。このため所轄庁の東京都によりNPO法人の認証が取り消された。
2013年 北海道のNPO法人が岩手県の自治体から東日本大震災にかかる緊急雇用創出事業を7億9千万円で受託したが、不明朗な運営で事業費を使い切ってしまい、住民から雇用していた従業員137名を全員解雇、2012年に事業は打ち切りとなり、翌2013年に負債総額約5億6千万円で破産手続開始決定に至った。2014年には代表理事が業務上横領で逮捕され、マンション購入などの目的で約5300万円を指摘流用していたことが明るみに出て、2016年に懲役6年の実刑判決を受けた。
2013年 大阪府のNPO法人の理事長が、病気の犬を救って欲しいという内容のチラシを頒布して寄附を呼びかけたが、この犬は実際には既に死亡しており、詐欺容疑で逮捕された。なお、このNPO法人は役員の変更等に関連して所轄庁から改善命令を受け、これに従わなかったため、2014年に認証が取り消された。
2015年 茨城県のNPO法人の理事長が無店舗型風俗店を経営し、事情を知らずに面接を受けに来た女子高生を脅して約60人の男性客を相手に売春行為を強要したなどとして売春防止法違反で逮捕され、後にNPO法人も認証が取り消された。なお、風俗店の事務所とNPO法人の事務所は同一住所だった。
2017年 東京都のNPO法人が主催する自然体験教室の宿泊先において、参加した男子児童あわせて46人に対して、スタッフが常習的にわいせつ行為をしたり、動画を撮影するなどしていたことか神奈川県警ほかの合同捜査で明らかとなり、主犯格のスタッフは強制猥褻及び児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕され、翌2018年に1審で懲役12年の判決を受けた。
2018年 東京都のNPO法人の実質運営者が債務者の過払い金返還金を詐取したとして逮捕されたが、都に届け出た役員名簿の記載とは異なるほか、事業報告書には「活動を停止中」とあるのに実際には過払い金返還訴訟のあっせん等をしていたことが明らかとなった。このため所轄庁の東京都によりNPO法人の認証が取り消された。
2018年 広島県内のNPO法人が殺処分ゼロをうたいシェルターに保護している犬の待遇を批判する記事が週刊誌に掲載されたことをきっかけに、これらの犬に法令に定める予防注射を受けさせなかったとして広島県警の強制捜査を受け、狂犬病予防法違反及び広島県動物愛護管理条例違反の疑いで法人及び代表理事らが書類送検された。
2018年 福岡県内の休眠状態のNPO法人が暴力団に乗っ取られ、組幹部の指示の下で暴力団関係者が役員として送り込まれた結果、当初4人だった理事が50人にまで増加し、福岡県警でも知事部局に適当な措置を求めているとの新聞報道がなされた。

自浄作用への期待

以上のようなNPO法人の運営をめぐる事件等の抑止策として、特定非営利活動促進法では積極的な情報公開をうたっています。つまりはNPO法人の運営に対するチェック機能は行政よりもむしろ市民自らが果たすべきとの考えが貫かれています。
もちろん法令等に違反した場合の所轄庁による報告及び検査、勧告・命令、事業の停止、認定又は設立認証の取消しといった権限は担保されているものの、実際の発動はかなり抑制的です。
NPO法人が反公益的な目的で利用される懸念は以前からあり、平成15年には内閣府の有識者会議「NPO法の適切な運用等に関する検討会」でも議論されていますが、結論としては、縦覧・閲覧書類を電子化してインターネットを活用した情報公開を進めること、監督を要するNPO法人に対してまずは市民への自主的な説明を求める要請を行うこと、特定非営利活動促進法の暴力団排除条項の的確な運用を図ることなどが提言されています。
平成28年の特定非営利活動促進法の改正では、事業報告書等の備置期間を約3年(翌々事業年度の末日まで)から5年に延長すること、毎年度の貸借対照表の公告を必須化すること、内閣府NPO法人ポータルサイトにおける情報提供の拡大を図ることなどが定められました。