NPO法の概要と成立の背景

特定非営利活動促進法とは

特定非営利活動促進法、通称「NPO法」とは、福祉、環境、まちづくりなどのさまざまな分野で活躍している団体に対して法人格を付与することによって、市民が行う自由な社会貢献活動であるところの特定非営利活動の健全な発展を促すことを目的とした法律です。この法律は1998年3月に国会において成立し、同年の12月に施行されました。


NPO法成立に至る背景

NPO法が成立する以前の1980年代にも、環境問題や国際交流などの非営利組織、いわゆるNGOの活動が盛んになっていましたが、決定的な契機となったのは1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災といわれています。
このとき、明石海峡を震源とするマグニチュード7.3クラスの巨大地震による家屋やビル、高速道路の倒壊、市街地一帯を覆い尽くす火災などによって、兵庫県・大阪府を中心とする関西地方の広い地域で6千人以上の尊い生命が失われました。
いっぽうで全国各地から被災者支援のために若い世代を中心とするボランティアが自発的に集まり、その総数は100万人以上に達しています。このことから阪神・淡路大震災のあった1995年は我が国の「ボランティア元年」と呼ばれるようになり、のちに閣議決定を経て1月17日を中心とする1週間は「防災とボランティア週間」に定められました。
震災を契機にしたボランティア活動への関心の高まりは、組織としてのNPOの不備を補い、さらに社会的な活動が円滑になるように法制度を整備すべきという方向に発展し、翌1996年には超党派のNPO議員連盟に加盟する国会議員らによる議員立法というかたちで「市民活動促進法案」が国会に上程されています。
法案はただちに採決されたわけではなく、閉会中も継続審議によって慎重な検討が加えられ、1998年3月に題名を「特定非営利活動促進法」と改めて成立に至りました。


NPOと他の組織(用語)の違い

世の中には「NPO」以外にもさまざまな呼び方をする組織体がありますが、その定義する内容は微妙に異なっています。
「NPO」は「Non-Profit Organization」、つまりは営利を目的としない団体の総称といえ、そのうち「特定非営利活動促進法」によって法人格を得たものが「NPO法人」として区別されます。今日のNPO隆盛のはしりとなった「NGO」は、「Non-Government Organization」の略称で、日本語では「非政府組織」と翻訳されることが多いですが、実際のところ非営利かつ非政府という意味ではNPOとNGOは共通しています。しかし伝統的にNGOのほうは国内のみならず海外を主要な舞台として活躍している団体を指すのが普通です。
いっぽうで「NPO」と「ボランティア」ですが、「ボランティア」は善意にもとづいて社会的な活動をしているものの、あくまでも個人のことを指しており、組織である「NPO」とはこの点で意味の違いがあります。もちろん個人としてのボランティアが何人かで集まってボランティア団体をつくれば、それはNPOの範疇に含まれます。


さまざまなNPO

「NPO」という用語が総称的なものである以上、より詳しく見ればそこにはさまざまな形態の団体が含まれていることになります。
狭義でいえば法人格を持ったNPO法人だけを「NPO」とすることもありますが、より広義でいえば、法人格を持たない市民活動団体も含まれますし、法人格は持っているものの特定非営利活動促進法ではない別の法律を根拠にしている社会福祉法人、一般・公益社団法人、一般・公益財団法人、学校法人、医療法人などを含めることもできます。さらには地縁や職域などの縁によって構成されている町内会や自治会、労働組合、生活協同組合、農業協同組合なども、営利を目的とするものではありませんので、NPOの仲間として含めることさえあります。
このように定義しだいでは同じ「NPO」という用語で言い表される団体はいくらでも拡張されてしまいますので、場合によっては最初に定義を厳密に定めておくことも必要です。


既存の制度では実現できなかった課題

NPOの種類がこのように多様であるとするならば、任意団体にとどまるNPOが法人格を得るための手段も一つではないはずです。特定非営利活動促進法が成立する以前にも、民法上の社団法人や財団法人といった(旧)公益法人制度を活用することは可能でした。(なお、現在は公益法人制度が改正されて、一般財団法人・公益財団法人などの区別が付けられています。)
ところが、こうした(旧)公益法人制度では、法人になれるかどうかは申請を受けた行政が「許可」するしくみとなっており、審査が厳しく裁量権の幅も大きいため、実際にはかなりの狭き門となっていました。草の根の活動から成長してきた多くのNPOにとって、既存の制度のハードルを越えることは難しい上に、そもそも市民の自発的な活動を前提としたNPOには、行政の強い規制や裁量という枠組みはなじまないという理由から、より簡便に法人格を取得するための方法として編み出されたのが、現在の特定非営利活動促進法でいう「認証」のしくみです。
「認証」は「許可」とは異なり、申請された内容を都道府県知事又は政令指定都市の市長が審査し、法律の要件を満たしていると判断されれば認めるのが原則です。法律に定められていることさえクリアできればよいため、手続の透明性という意味でも、NPOにとっては都合のよい制度ということができます。